【ギフテッドな日々】障害と天才の挟間より速報

動作性IQ141ギフテッド。そんな人の視点から見た世界をつらつらとつづっていきます。

世界滅亡スイッチ

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 お待たせしました。感覚追体験ゲーム(仮)の第2弾です。

 ※感覚追体験ゲーム(仮)についてはこちら↓
mai-ko.hatenablog.com

 こちらのエントリーを見てくれた、ある特性持ちの友人が「私の特性も分析してみるといい!」と言ってくれたので挑戦してみました。

 それではさっそくどうぞ。

世界滅亡スイッチ

 目の前の、赤いダイヤルを

 左へ3回、右へ4回、左へ6回、右へ2回。

 その後に、確定ボタンを押す。

 それが私の仕事の全てだった。


 誰にでもできる、至極簡単で、至極単純な作業の繰り返し。この作業が何のために必要なのか、最終的に何を成すのかは誰も知らなかった。原子力発電所を管理するために必要な作業だとか、ミサイルの材料になるだとか、様々なうわさや憶測が飛び交っているが真相は分からないままだ。

 ただ仕事は仕事として、工員それぞれが担当の目盛り分、ダイヤルを回して確定ボタンを押す。手順を間違えたと思ったら、確定ボタンのすぐ上にあるリセットボタンを押せばいい。そうすると最初からやり直すことができる。


 左へ3回……右へ、4回。カチ、カチ、カチ、カチ。左へ、1、2、3、4、5……6回。右へ、2……回。


 この作業を、後でチェックしてくれるような検収という立場の人間はいない。各ダイヤルは、全てその作業者の責任において進行するのだ。

 至極単純で、普通にやっていれば間違いようのない仕事。だが、その仕事はごく慎重に行われる。

 以前この工場で働いていた先輩が、一度だけミスをやらかした。その結果の、詳細については分からない。分からないが、そのミスの直後、人工衛星南アフリカの沿岸部に墜落した。当時のテレビは連日、そのニュースで持ち切りだった。ケープタウンやその周辺は甚大な被害をこうむり、多くの犠牲者を出したらしい。

 関連性についても分からない。分からないが、この工場の管理会社は大企業らしく本当にしっかりしている。先輩のミスが発覚した後、すぐに偉い人達が大勢工場に訪れ、入れ代わり立ち代わり、工員の見学や指導に当たっていた。その指導が関係しているのかは分からないが、ミスをした先輩は事件から二週間ほど後、急に依願退職をした。退職直前の先輩の震える唇、血の気が一切感じられない表情だけは、今でも鮮明に覚えている。


 左へ、3回。右へ……4回、左へ6回、右へ……


 ……あれ? 今、ちゃんと左へ6回、回したか?

 怪しい時は必ずリセットボタンを押して、最初からやり直すようにしている。この仕事は、いい加減な人間には務まらない。


 左へ3回……右へ4回。1、2、3、4、5、6回。右、2、か、い……よし。


 確定ボタンを押そうとする。その直前で、手が止まる。

 ……最初、ちゃんと左に3回、回したか?

 確認ボタンの上で、手が瞬間的に汗ばみ、震える。

 いや、確かに回したはずだ。1から6までの数字しかないのに、これだけ慎重に数えているのに間違えている訳がない。大丈夫、普通に考えて、10割方大丈夫だ。

 ……本当に?

 ……いや、でも確信が持てない時はやり直そう。一番怖いのは人為的ミスなのだから。


 左へ……3、回。右へ……4、回。左へ……2、3、4,5、……6、回。右へ……2、回。


 よし、大丈夫。大丈、夫……だな。

 ………

 ………


 確定ボタンが指先を拒む。歪んで、力が入らない。
 ……もう一回、もう一回だけやり直そう……


 左へ、いち、に……3回。右へ、いち、に、さん……4回。左へ……いち、に、さん、し、ご、ろく。6回。右へ、いち、に。2回。

 確定ボタンを押す。

 ……よし。次だ。
 左へ3回、右へ4回……

答え合わせ

 第2弾はちょっとダイレクトな作りだったかもしれません。

 今回の感覚追体験は、“強迫性障害による確認行為”ですね。

 今回、例にさせていただいた友人の場合は、まだ診断名が下りていない、比較的軽度のものらしいのですが。軽度という表現は、あくまで重症と比較して、です。例えば、家を出る際の確認には20分くらいかけてしまうそう。鍵が掛かっているかだけで7~8回くらい確認する、と言っていました。

 それでも無意味な確認行動を繰り返してしまう。自分で大丈夫だと分かっているはずなのに、やめられない。そんな感じらしいのです。

 無言の圧力というか、観念に強迫されている感を表現できていればいいのですが……今回は感覚理解や表現が正しいかどうか、逆に私が答え合わせをしてもらえそうなのでいいですねw よろしく、友人。